ローカル新聞社での仕事は順調に始まった。
とはいえローカルペーパーだし、ウィークリーの発行なのでそんなにドタバタすることはない。
個人個人に担当業務がきっちりと分けられていたので、基本的に同僚と会話する必要はなく、仕事中でもヘッドフォンでCDを聞きながら自分の世界に入ることができた。
毎朝駅から会社のあるビルの途中にあるカナダ発コーヒーチェーン「SecondCup」に寄り、すっかり顔を覚えられたのか、何も言わなくても出てくるようになった中深煎りのコーヒーをテイクアウト。5分程前に会社に着くと、ぼちぼちとPCを立ち上げる。
そして10時には社内で暗黙のルールとなっているお茶休憩があり、副編集長が買ってきてくれるお菓子をぽりぽり食べながら仕事に戻るとあっという間に12時。
やることはしっかりやって、17時ぴったりに退社。混みあうエレベータに乗る枠を争う毎日を送っていた。
あーこういう環境って日本では難しいよなぁ・・・。
そんなこんなの毎日を過ごすうち、お給料の振込みには銀行口座が必要だということを知らされた。大事なお給料を貰い遅れてはいかん!というわけで、早速口座を開設することにした。
大都市トロントに数多くある銀行の中で悩んだ結果、会社の近くにあるロイヤルバンクかCIBCがいいのではと考えていた。
大手ならそんなに変わることはないだろうと甘く考えていたのだが、友達に聞くと日本と違って銀行によって色々と違うらしいではないか。
なんと!口座の管理として、毎月手数料がとられる銀行も珍しくないというのだ。
たいした金額を入れるわけじゃないし、短期の話だし、管理手数料なんて冗談じゃない!ということで、管理料が無料かつ総合的に良さそうなCIBCに決定。早速会社の帰りに駅近くの窓口を訪ねた。
日本なら番号札をとって、呼ばれた先でちょちょいと済ませるところだけど、カナダではたかだか普通口座を開設するだけでもちょっとした応接ブースのような所に通される。
いかにも仕事のできそうな女性担当者に名刺まで渡され、妙に緊張してしまった。
でもやることは日本と特に変わりなし。とにかく無駄なサービスなどにお金を払うことがないようにだけ全神経を集中し、無事に口座開設を終えた。
部屋を借りて電話を開設し、仕事も見つけ銀行口座もゲット。行きあたりばったりで来たトロントだったけど、やってみれば何とかなるものだ。
やるじゃん、私。
この時、少しだけ自分が強くなれた気がした。