台湾土産として有名な阿原(ユアン)。ヨモギなど無農薬天然ハーブを使用した石鹸で人気に火がついたブランドだ。日本橋に日本初上陸した誠品書店にもテナントとして入っている。
そして今回私が紹介したいのは石鹸ではない。歯磨き粉やシャンプーも素晴らしいことは素晴らしいのだが、それらでもない。
渾身の一押しは、日本語の商品パンフレットなのである。
ところで私が初めて阿原(ユアン)の商品に出会ったのは、今から10年ほど前だったと思う。台湾の友人に連れられて訪ねた金山金包里老街の、それはそれは小さな露店だった。店員に勧められるがままに嗅いだヨモギ石鹸の何ともいえない懐かしい香りは、今でも嗅覚の奥深いところに残っている。
以来、Q square 京站時尚廣場に出来たと思った直後に永康街に路面店を見つけ、その後もあれよあれよという間に店舗が増えていき、今では空港の免税店で駆け込みのお土産として購入することもできれば、日本で手に入れることも可能だ。通信販売(オンラインショップ)もある。
阿原(ユアン)は、いわば自然派石鹸の火付け役的な役割を担い、今では台湾中で身体に優しい石鹸を買うことができるようになった。たくさんのブランドがありすぎて暫く阿原YUANからは遠ざかっていたのであるが、ある時たまたま液体シャンプーを探していたこともあり、敦南誠品店地下にあるフードコートの帰りに店をのぞいてみた。
片言の日本語が話せる若い女性店員は、私が日本人だとわかるとすぐに石鹸の定番商品や人気商品の紹介を始めた。恐らく日本人の多くは石鹸を目当てに訪れるのだろう。しかし私が見たかったのは液体シャンプーである。すかさずシャンプーについていくつか質問を投げかけてみたところ、あまりスッキリする回答を得ることはできなかった。石鹸を説明していた時の流暢さを思うと全くの別人である。
お互いだんだん気まずくなり、愛想笑いも増えてきた。ここは潮時と判断し、店を出ようと思ったタイミングで、せめてこれだけでもと言わんばかりに薄い紙を手渡してきた。日本語で書かれた商品のパンフレットだった。残念なことにその中には一切液体シャンプーの情報がなく、掲載されていた商品は石鹸のみであった。
帰りがけにトイレに寄る途中でごみ箱を見つけたので、すでに荷物になるだけで必要ないものと化していたパンフレットを捨てようかと思ったが、せっかくの気持ちを踏みにじるのもためらわれ、とりあえず持って帰ることにした。
その後すっかり存在を忘れられていたパンフレットが日の目を浴びたのは、帰国後しばらくしてショップカードなど細々としたものを整理していたときである。
わりと時間があったので、何とはなしにページをめくってみると、そこには阿原(ユアン)の静かな物語が閉じ込められていた。
私は整理する手を止め、しばらくその物語の中にいた。静かで、厳しいけど暖かい、それはそれは心地よい空間だった。
誰かにこの思いを伝えたくて、すぐに本が大好きな友人に手渡した。
ページをめくるなり「最初の一文からくるね。」と漏らしていた。別に自分が書いたわけでもないのに、何ともいえない誇らしさがあふれたのは何でだろう。
中国語はわからないけど、ぜひ原文も読んでみたいと強く思った。日本語訳であのクオリティの高さである。きっと漢詩のように味わうことができるに違いない。次回の台湾訪問の楽しみがまたひとつ増えた。
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