はたして「無」の時間はどのくらいだったのかは定かではない。
とにかく「ぐるるるるぅぅぅ」というお腹の音で、一気に現実の世界に戻った。
そう、私はどんなに落ち込んでも食欲だけはなくしたことがないのだ。
明日からの当面の食材も必要だし・・・とリアルな問題も沸き、スーパーにでも行ってくるかと簡単に身支度をして家を出た。
しかしいくら待ってもバスが来ない。
おっかしいなぁと思った時、前を通った女の人が親切に教えてくれた。
「今日はストライキでバスは来ないわよ。」
がががーん・・・
いや、電車なら走っているかもと思いすかさず質問すると・・・
「電車もストリートカーもだめよ。同じ会社だからね。」
「・・・・・・・・。」
うわーどうしよう。この近くにスーパーってあるのかなぁ・・・。
困った私は、下の階に住んでいる気のいいマダム、アイリーンが「何かあればいつでも聞いてね」と挨拶に行った際言ってくれてたことを思い出し、早速聞きに行った。
「あのぅ。この近くにスーパーってありますか?」
すると
「あるわよ、あるわよ。ちょっと待って!今地図書いてあげる。」 とメモを渡してくれた。
なんていい人なんだぁ・・・。
すぐにそのメモを握りしめながら向かった。ところが歩いても歩いてもスーパーは見えない。
「おっかしいなぁ。道を間違えたかしら・・・。」
歩き始めてから既に30分は経っている。でも分かりやすい道だし、間違えようもない。気を取り直してまた歩き始めると、10分程してようやくスーパーらしき看板が見えた。
「あ、あったー!!!」 と心の中で叫んだ瞬間、「ぎゅるるるぅぅぅぅぅぅ~」 というお腹の叫び。
これは何よりも腹ごしらえが先とスーパーの手前にあったバーガーキングに飛び込んだ。
ハンバーガーにパクつき店内を暴れ回る子供を眺めながら、今後カナダ人の「距離感」には注意せねばと自分に言い聞かせた。