日本を出発する前から、ワーホリの終わりは旅をしようと決めていた。
日本を発つ前から、姉とサッカーを観にイタリアへ行くことは決めていた。
とある日、いつものように仲間とだらだら過ごしていた時のこと。
トロントで知り合い、すでに帰国したメキシコ人の友達が、遊びにこないかというメールを送ってきたという話を何気なくすると、2人の友人が食いついてきた。
彼女たちも帰国前にヨーロッパを周遊する予定だったので、金銭的に余裕がないのは知っていた。でも今しか出来ないことは今やろうという考えのもとにトロントでの日々を過ごしていた私達は、何とかなるよ!と俄然盛り上がった。
実はメキシコ人の友人からも同じようなことを言われていた。イタリアに行くからお金が・・・と渋っていた私に、その分働いて稼げばいいじゃんと、至極当然のように諭されたのだ。
日本人の場合、休みがあったら何をする、お金があったら何をする、という具合に、時間やお金ありきで物事を考える傾向がある。でもメキシコ人の場合は全くの正反対で、やりたいことがあるから、欲しい物があるから、そのために休み働くのだ。
実際カナダから中南米への航空券は、日本からの値段に比べたらはるかに安い。以前旅行代理店に貼ってあった広告を見ていたら、ブエノスアイレス行きの往復チケットが800カナダドル(約95000円)で出ていた。
友人と話し合い、まずアカプルコに2日滞在、その後メキシコシティの友人宅で3泊することに決めた。うまく日程が合わず、2週間のイタリア旅行から夕方にトロントに着き、その翌日早朝にメキシコへ出発するという強行スケジュールになってしまったのだが、あの時はどうにかなるだろうと軽く考えていた。
旅行会社に勤める知り合いに依頼したチケットは、5万円程度だった。
1年間お世話になった出版社に別れを告げ、予定より1ヶ月ほど日本への帰国が遅れたため、海外保険の延長手続きをした。トロントからそのまま帰国であればそれほど心配はしなかったのだが、メキシコへ行くとなると何が起こるかわからない。病気にならないとしても、物を盗まれる可能性も否定できないし、延長したほうが賢明と判断したのだ。
またイタリア滞在中にワーホリのビザも切れてしまう。日本大使館へ問い合わせたところ、日本への航空券を購入し、それをイタリア出国時なりカナダ入国時に提示すれば、新たに観光目的のノービザ扱いになるので問題ないとのことだったので、少し先ではあったが日本への航空券も手に入れた。
いよいよワーホリが本当に終わるんだなと思うと、旅行前の楽しい気分を飲み込むように、胸の痛みが押し寄せた。